読書感想文【母性】
湊かなえさんの、母性読みました。
これ、読んだらダメなやつかもって思いながら読み進めた。
読み終わったら、逆にすっきりした。
私と母に少し似てる母娘の話。
少しネタバレになってしまうかもだけど、私達親子の事をこの話に重ねてみる。
私の母は、事あるごとに自分は〇〇家の人間じゃありませんから!って吐き捨てていた。
義父母と義姉が嫌いだったのだ。だから同居していた私たちのところに、義姉は里帰りしてくると、ストレスを溜めた母が父に八つ当たりしてそう叫ぶ。
でも、私には、私とも家族ではない、と言われている気がしていた。だって私の苗字は〇〇だ。
母は自分の父親が大好きだった。穏やかな人だった。
私には大好きと公言できる親はいなかった。ヒステリックな母と、寡黙な父。
泣き虫だった私は、姉に意地悪されて泣き虫なんだから泣けって言われて、本当に泣くと、泣いた事をからかわれた。そして母に泣くなと叱られた。
私は未だに人前では泣けない。どんなに感動する友人の結婚式でさえ。
母の大好きな祖父が亡くなった時、初めての身内の葬儀で、すごく悲しいのに泣くのはみっともないと思って泣かなかった。ふと周りを見たらみんな泣いてた。
なんだ、泣いていいんだ、と思ってから泣いたのをよく覚えている。
その翌年父方の祖父も他界した。その時はなんとなく、泣かなかった。
母はせわしなく働いていた。〇〇家勢揃いで、大変そうで私も手伝って、母を労っていた。だから、泣かなかった。
母に愛されたい、という気持ちもあるけど、母を大好きになりたくて一生懸命だった。大好きじゃない事を自覚していたから。
私は母を子供の頃から名前で呼んでいる。私は【お母さん】っていう生き物じゃない、個人だ、と言う母の主張に従って。私はお母さんって呼びたかった。いまでも呼びたい。
息子にままぁって呼ばれるのが心地よくてたまらないのに、母には苦痛だったのだろう。
母と娘で、同じ事象も違う感性で見ている。そういう話なんだけど、私達親子になぞらえると、心が乱れるかと思いきや逆にすっきりした。
母の中には母が決めたルールがあって、それを守らない奴は許さない。自分が耐えた我慢を耐えられないヤツは許さない。
そのルールは万人に正解ではない、と私は理解している。だから、大丈夫。私には母のルールはいらないし、息子にもいらない。
母性を呼んで、そう感じた。