うそ、ほんと、日常。

なんかいろいろ失敗だらけの私の日常。

怖くて手が震えた。

今日も帰りは終電近かった。
たまたま、彼と一緒に帰ってた。

乗り換えの駅は、電車が遅れてて、人が溢れてた。
あー、一本逃さないと、お前乗れないレベルの混み具合になりそうだね、って彼が言って、列に並ばないで離れてた。

タクシーで帰る?いやいや、一本待ってみよ?みたいな話をしている時、彼の肩越しに、ハゲのおっさんが堅物そうなおっさんの肩を柱にどんって押さえつけた。

多分肩がぶつかったとか、そんな揉め事。

ハゲのおっさんは、なにやら嫌味な口調で言って、最後に堅物おっさんの顔をぺちぺちって軽く叩いて去ろうとした。

電車が遅れて到着した。

ホームに溢れてた人がなだれ込んだ。

ハゲのおっさんがその流れに乗ろうと背を向けた時、堅物おっさんが後ろからハゲのおっさんの顔をグーで2発殴った。

ハゲのおっさんが私の視界から消えた。

堅物おっさんは何事もなかったかのように電車に乗り込んだ。

ハゲのおっさんはわめきながら起き上がった。顔が血まみれだった。

堅物おっさんは電車の中からその様子を見ていた。私以外の人たちは遅れた電車に乗る事に必死で、誰が殴ったか分からない。

どこ行きやがったーってハゲのおっさんが叫んだ。ふらふらして、たっても立っても倒れる。

周りの人が血に気がついて駅員さん呼んだり、ティッシュ渡したり、座らせたり。

それを、電車の中から、冷たい表情でじっと見ている堅物。

駅員さんが来た。

駅員さんは、とにかくハゲを座らせて、とにかく電車を発車させようと、車掌さんにライト上げてドアを閉めさせた。

電車は駅を出た。

彼は堅物が殴った後から、私があっ!て言ったから見てた。
電車に乗らなかったのは私達だけで、一部始終を見ていたのは私だけ。

言いたかったんだけど、殴ったのこの人ですって。言いたかったんだけど、私は冷たい表情の堅物が怖くて動けなかった。

興奮状態の血まみれのハゲも怖かったけど、冷たい表情で電車から立っても立っても倒れるハゲをじっと見てる堅物が怖かった。

彼は、あーあ、酔っ払いーって呑気に見てた。私は怖くて彼の袖かどっかを掴んでた。

震えとるよ?って彼が言った。

手がふるふるしてた。

怖いよ。

って私は言った。大丈夫、もう見るなって彼は私を少し離れたとこに連れてってくれた。

血も怖かったけど、殴った人が電車からずっと見てたの。それが怖かったの。表情が。逃げた。何食わぬ顔で逃げた。

ハゲも悪い。すごく悪い。ぺちぺちした時は関係ない私もイラっとする顔だった。どっちも悪い。くだらない。

でも殴ったりしないで。怖い。

彼が一緒でよかった。1人だったら、 もっと怖かった。