カウンセリング【初日】③
アンケート用紙を受付に渡して、ソファに戻った。
水の流れる音と、鳥の鳴き声。
スピーカーはどこにあるのかな?と、しょうもない事が気になってキョロキョロしていると、
『miyciさんですね。こちらにどうぞ』
50代後半くらいの、物腰の柔らかい女性が現れて、並んだ扉の一つに案内された。
扉の中はソファと丸いテーブル。書棚と机。
丸いテーブルを挟んで、私とその人。
『吉田と申します。よろしくお願いします。』
吉田さんと名乗ったその人が、カウンセラーさんだった。
別に普通の優しそうな人。年齢のせいか、安心感オーラがすごく出ていた。
こんな人がお母さんだったらよかったな。それが私の第一印象。
吉田さんは、私のアンケート用紙と、分厚いノートを膝に乗せて、話し始めた。
『今日はお仕事の後ですか?』
『そうです』
『ここは近いですか?』
『職場と自宅の間くらいで、乗換の駅です』
『そうですか。じゃあちょうどいいですね。』
吉田さんの話し方は、なんか優しい。私はすごく緊張していたけど、すっと言葉が出てくる気がした。
『miyciさんがカウンセリングを受けたいと思われたきっかけは、メールやアンケート用紙でお伺いしています。
ご家族の事やご自身の事でお悩みなんですね。』
ご家族やご自身の事で悩んでいるのかすら、分からない。
何がどうして、うまく生きれないのか分からない。それをうまく説明できる自信もない。
『メールで、以前鬱だったと書かれてましたが、今はクリニックに通ってますか?』
やっぱり、それは重要確認事項なんだろう。吉田さんは、さらりと、なんでもない事みたいに聞いた。
『今は通っていません。仕事にも行けるし、不眠でもないし、ただ時々突然、辛い事が頭の中いっぱいになって、息が苦しくなったり、体が強張ったりするので、病院に行く程ではないけど、辛いと思って今日来ました。』
なんだか、変な説明になってしまった。